2025年2月中に読み散らかしたテキストの備忘録です(覚えている分だけ)。二月は逃げてしまう。
アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風 神林長平 ハヤカワ文庫
雪風シリーズの三巻。それまでが連作短編っぽかったのに比べ、今作はみっちりとした長編小説です。そして、より登場人物がいきいきとしはじめています。一巻を読んだ時に、静かなで抑えた、モノクロ画めいた印象を受けたのですが、二巻で世界に少し光が差したような、そしてこの巻では色鮮やかな印象を受けました。最後の「雪風は、魔を祓うためにきたのだ」ってめちゃくちゃかっこいい…
これはペンです 円城塔 新潮文庫
円城塔、二冊目。告白すると、情景描写のない小説は読むのが苦手です。登場人物の着ているものや食べているもの、持っているカバンの様子がわからないとうまく頭に入ってこないのです。一方この小説そういうものが一切なくて、ほぼ語り手の独り言のような文章で構成されています。はじめはとっつきにくくて、三文読んで二文もどる、を繰り返していましたが、読み方のコツをなんとなく掴んだら面白く一気に読めました。これは真面目に情景を想起するのではなく、ことばあそびだと思って読めばいいのね!(円城塔ファンの人に怒られそうだ)でも、頭の中で一生懸命再構築するのをやめて、ひたすら言葉を追いかけて溺れる感覚で読む、という体験がこんなに楽しいと思わなかったです。文章が軽やかで澄んでいて整っていて、あたたかくて懐かしくてせつない感じ。例えていうと、祖父母宅の二階の、古いけれどよく磨かれた型板ガラスごしにみる、まろみを帯びた金色の夕暮れの光、かな。ところで、文章自動生成はできるし、データを読ませて解析させることも(分野によっては)できそうだけれど、それを解釈して空想を膨らませるのはまだちょっと難しいんじゃないかな。だから、論文自動生成は、introductionとmethodとresultはできそうだけれど、discussionだけはまだ人の手がいりますね。
鯉姫婚姻譚 藍銅ツバメ 新潮文庫
雪風屋敷の池に棲む人魚に向けた、若隠居による結婚回避のための千夜一夜物語。無邪気な人魚、ちょっと飄々とした若隠居、四季折々の花に美味しいお菓子、と、道具立てはメルヘンなのに、文章からどこか不穏な匂いが立ちのぼるのがすごいなと思います。結末は一番綺麗な終わりかただと思いました。
ただ、これは、若隠居視点で語られるからこのような物語なのであって、化け物じみた人魚を知る周囲の人にとっては、某エルフ漫画の「人を騙すために言葉を使」う魔物とそれに騙されていく大切な人、というように見えていたんだろうなと思うと、だいぶホラーだな。